ポーカー学習ロードマップ | NTPoker
この記事ではポーカー初心者からプロレベルに強くなるまでの全体像のロードマップ、また具体的に「何をすれば良いのか」ということについて解説します。
ポーカーを始めてみたい、そこそこできるようになったけどもっと強くなりたい、様々なレベルで様々な思いがあるかと思いますが、どのレベルの方でも参考になるかと思いますので是非最後まで読んでいただければと思います。
目次
はじめに
まず大前提として、誰にでも最強になれる魔法のような学習方法というものはこの世に存在しません。そのようなものがあれば世の中の人たちは既にみんなポーカーが物凄く強くなっています。 基本的には「自分で」自分に足りていないところを見つけ、勉強し、実践を行う、ということを繰り返していくしかありません。
とはいえ、「効率的な」上達のロードマップ、学習方法は存在し、それは一定程度の再現性があるものと思われます。本記事では、そういった意味で「再現性の高い」ポーカー上達のロードマップを解説していきます。
ポーカーを強くなっていくためには「座学」と「実践」の両方をバランスよく行うことがポーカー上達のカギになります。座学ばかりやっていても頭でっかちになり、実践ばかりやっていてもなかなか気づけない観点があります。
また、まだそのレベルのことをやるべきではないのに、飛ばしてやってしまっているというケースも多く見受けられます。
以上を加味して、どういった内容を、どれくらいのバランスで、どのレベルでやればいいのか、について解説してい きます。
学習の全体像
学習の全体像としては、
これらを
初級編→中級編→上級編
という風に分けました。GTOが何か分からない方は
こちらから。
イメージとしては以下の通りです。
- 初級編:ルールは分かるし、友達とも楽しくプレーできる。
マサラタウンからバッチ3個目くらいまでのイメージ。 - 中級編:アミューズで負け越すことはあまりない。スタッツも概ね正しくプレー出来ていて、うまい人たちとの実力差に気づき始める。
バッチ4個目から四天王、チャンピオンを倒すレベル。 - 上級編:海外カジノで専業としても生活できるレベル。
図鑑のコンプリートや100レベのポケモンを量産しているレベル。
これらの各々のレベルにおいて、どういった観点が重要でありどのような学習方法が最適であるのか解説していきます。
また、多くのポーカープレイヤーは自分自身のレベルを過信しがちですので、自分の思ったところの一個手前から読んでいくことをお勧めします。
初級編
広義でのポーカーのルール
まずは広義でのポーカーのルールについて覚える必要があります。
ここで言う広義というのはポーカーの実際のルール(狭義)に加えて、ポーカープレイヤーでは常識と言われている事柄の理解を意味します。
以下の内容についてしっかりと理解し、人へ説明できるレベルであればここはクリアしていると言えるでしょう。
狭義のルール
常識
ただゲームの進行だけ理解しているだけでは、ポーカーのルールを理解しているとは言い難く、一般的な常識を理解して初めてポーカーができると言えるでしょう。
プリフロップレンジ
プリフロップレンジを「丸暗記」しましょう。
全てのゲームはプリフロップから始まるため、感覚値以上に収支に大きく影響します。
プリフロップの通算の成績が80%を超えればここはクリアしていると言えるでしょう。
毎日1時間程度トレーニングしたとすると、おそらく1か月弱ではできるようになるでしょう。
ここまできていれば、一般的に「ポーカーをできる」という風に言っても遜色ありません。ゴルフで言うなら100切り手前といったところでしょうか。
【ユーザーガイド】トレーニング トレーニングの概要と使い方を紹介しています。
中級編
GTO戦略の感覚的な理解
上の広義でのポーカーのルールと、プリフロップがしっかりとできるようになったら次のステップはハンド数をこなすことです。
ここで言うハンド数というのはもちろん実践も含まれていますが、それとGTOトレーニングのハンド数です。これをひたすらに行い、「GTOだったらどういうアクションになるのか」ということが感覚的に分かるようになります。このひたすらこなすという作業が遠回りであるように見え、実は一番の近道です。
【ユーザーガイド】トレーニング トレーニングの概要と 使い方を紹介しています。
GTO通りのアクションが75%以上取れるようになったらここはクリアと言えるでしょう。NTPokerのGTOトレーニング機能ではAccuracy Rate(正答率)が確認することができるので、目安にしてみてください。ここは毎日行ったとしても恐らく2~3か月くらいはかかります。
また、GTOの頻度が存在している選択肢において、頻度の少ない方を選ぶことはあまり問題ではありませんが、頻度が0%のものを選ぶと確実にEVをロスしているので、そういったミスはしないように心がけることが重要になります。
自分は絶対に理論から入らないとダメだ、という人はこれを行う前に以下の記事や、「Modern Poker Theory - 現代ポーカー理論」を読んでみることをお勧めします。
このフェーズではGTOのトレーニングに加えて、実践を行うことも極めて大切です。
両方行うことで、GTOのイメージ醸成に加えて、周りのプレイヤーがGTOとどう違うのか見えてくるようになります。ここがなんとなく見えてくるようになると、感覚的ではありますがエクスプロイトもそれなりにはできるようになってきます。
特殊なケースの理解
ポーカーには、100BBキャッシュゲーム以外にも、トーナメントやディープスタックなど様々な状況があります。それらの状況から自分のアクションにどのように影響するのか分かるようにしましょう。
ここまでくるとあなたはもう恐らくアミューズや友達に対して負け越すことはほとんどなくなるかと思います。ゴルフで言うなら80代前半といったところでしょうか。
上級編
上級編はそれなりにポーカーができる人から、海外カジノで専業としても生活できるレベルの人まで幅広い層を示しているため、上級の中でも自分のレベル感にあった学習をしていく必要があります。 一般的に取るべき学習手順に沿って、以下解説を行います。
プリフロップレンジの強化
ここまでくると細かいミスが収支にそれなりに響いてくるようになるため、プリフロップの精度を更に上げる必要が出てきます。トレーニングで通算95%は超えていきたいです。
さらに、プリフロのレンジ構成についても深く理解し、状況に応じてレンジを調整することが求められます。
GTOの解像度の向上
次のステップとしてはGTOでのアクションが「なんとなく分かる」というフェーズから「なぜ」そうなるのか汎用的な概念を用いて説明できるようになるレベルを目指します。そのために、以下の3点から解像度を向上させましょう。
ゲーム理論の理解
ポーカーの最もバランスの取れた戦略とされるGTO戦略はゲーム理論に裏づけられています。
ナッシュ均衡などのゲーム理論の背景を理解した上でGTO戦略の学習を行うと、理論的な裏付けからアクション決定までの解像度が上がります。そのため、ゲーム理論の学習もGTOを学習する上では必須です。
フロップ集合分析
ポーカーにはアクションを決める要素が膨大にあり、それらを全て考慮するこ とは非常に困難です。そのため、どの要素がどのようにアクションに影響するのかを分析することはGTO戦略の解像度を上げるうえで非常に有効な手段となります。
ボードもアクションを決める要素の1つで、フロップ時点でも組み合わせは1755種類あります。全ての組み合わせを網羅し対応することは難しいため、いくつかのパターンに分け、アクションの特徴を把握します。これを集合分析と呼びます。
特にポストフロップでは、フロップの経験数が最も多く、フロップで正しいアクションを取れるようになることが非常に重要であり、収支に大きく影響します。
GTO戦略への解釈の深堀
更に次のステップとしてGTOでのアクションが「なぜ」そうなるのか、汎用的な概念に加えて、より高い解像度と理論的な裏付けで個別具体的に説明できるようになることを目指します。
具体的なスポットの解析をひたすらに繰り返します。
各々のハンドとシチュエーションにおいて、なぜそのアクションが正当化されるのか分析し、「なんとなく」という意思決定を極限まで減らし、全てのアクションにそれを正当化する理由を述べられるようになることを目指します。
簡単な具体例を用いて考えてみましょう。
以下は、2bet pot BB vs BTNにおけるフロップのBTN側のGTO戦略です。
BTNはレンジの約70%の頻度でベットすることが分かっており、ほとんどのハンドがベットするオプションを持っていることが明らかです。
この戦略が有効な理由を理解するためには、以下の基本的な要素に注目してみます。
レンジ全体のEQについて考えると、BTNは約53%のEQを持ち、さらにナッツアドバンテージもあるため有利な状況にあります。 お互いのレンジの組み合わせからも、Kハイでドライなボードはアグレッサーが有利な傾向が多いことが言えそうです。
BTNのレンジ構成に着目すると、非常に強いハンドも含まれている一方で、単なるハイカードのような弱いハンドも多く含まれています。
このため、強いハンドではポットを増やし、弱いハンドではフォールドエクイティを生み出すために、レンジ全体で高頻度にベットする戦略が採用されていると考えられます。
多くの場合、ベットサイズはポットの33%が採用されています。
これは、高頻度でベットを行いレンジ全体で期待値を最大化するために、ベットサイズを調整した結果だと考えられます。
各ベットサイズにおけるレンジ構成とEQの関係を詳細に分析することで、さらに細かな理由を理解できます。
結論として、「強いハンドと弱いハンドがバランスよく含まれ、レンジ全体で有利な状況にある」場合、「レンジ全体で高頻度で小さなベットを行う」という解釈が言えそうです。
このようなGTO戦略の解釈をさまざまなシチュエーションで異なる視点から繰り返し行うことが重要です。
解釈を細分化し、多角的な視点で分析することで、その精度や解像度が高まります。
これにより、類似のシチュエーションに遭遇した際に、より豊富な理論的根拠に基づいて戦略を構築できるため、解釈の精度や視点の種類が向上するほど、実戦での戦略構築の精度と期待値も上がります。
また、これらの深い理解はGTO戦略が適さない状況を理解するのにも役立ち、エクスプロイト戦略の構築においても非常に重要です。
上記の3点からGTO戦略の解像度を向上させ、論理的な裏付けから自分のアクションを決定できるようになりましょう。
自分のレンジにはどのようなハンドが含まれており、それらのうちのどのハンドがバリューで、どのハンドがブラフで、自分のレンジ全体でどのようにアクションのバランスを取っているのかおおまかに説明できるようになればここはクリアと言えるでしょう。
ここまでできるようになると、ポストフロップトレーニングの正解率は90%を超えてくるでしょう。
GTOをベースとしたエクスプロイト戦略
エクスプロイト戦略を本格的に勉強するのはこのレベルからです。
よくネットの記事などではGTO戦略対エクスプロイト戦略というものが見受けられますが、実はエクスプロイト戦略こそGTOの理解が必要となります。
なぜなら、エクスプロイト戦略はそもそも相手の「傾向」から搾取することでEVをより大きくする戦略であり、あなた自身 がその「傾向」を測る尺度を持っていなければ実現できるはずがありません。この尺度こそGTO戦略となります。
エクスプロイト戦略を本格的に学習するためには、GTO戦略への理解が必須であるため、このレベルからになります。
また、エクスプロイト戦略こそケースバイケースであり、考える要素が無数にあります。そういった無数にある要素を一つ一つしらみつぶしに学習することは学習効率が悪く、相手がGTO戦略からずれているところを探し出すのが効率的です。
これまで「なんとなく」できていたエクスプロイト戦略から、より論理的に相手の性格やプレイラインを分析し、適切なエクスプロイト戦略ができるようになることを目指します。
例えば、相手のGTO戦略とのずれを把握する方法は、以下の2つがあります。
- 相手のレンジ構成の傾向を把握する
プレイヤーによってレンジの構成の仕方には癖があります。例えばチェックレイズのレンジがバリュー過多になっている、BBのレイズレンジがリニアになっている、など理論値から外れているレンジでプレーしている場合、エクスプロイト戦略することでEVをより大きくすることができます。
- 相手のレンジの下限を見つける
実際にショウダウンされたハンドと相手のシチュエーションを加味し、GTO上考えられる相手のレンジと実際のハンドを比較します。これらを比較したときにギリギリフォールドすべきハンドをコールしていないか。レイズすべきハンドをコールに回していないか、などを確認することでGTOとのずれを把 握することができます。
こういった相手のレンジ構成の見積もりやレンジの下限を見つけ出すことで、こちらのレンジを柔軟に変えられるようになることを目指します。これが上達するとGTOを意思決定要因の一部として捉え、幅広い情報から最終的なアクションを決めEVの最大化を実現することでき、プロレベルのプレイヤーは皆これを行っています。
ゴルフで言うならイーブンからアンダーで回るレベル。十分プロとして生計を立てられるレベルですね。